PS5 ProのPSSR 1.0はFSR 3.1を凌駕する性能

Digital FoundryがPSSRとFSR 3.1の比較をしていました。

超解像技術

DLSS、FSR、PSSR、これらは超解像技術とも呼ばれるもので、ざっくり言えば優れたアップスケーリング技術です。

ゲームを低解像度でレンダリングし、複雑なアルゴリズムに通し、高解像度の画像を出力するというもの。
例えば1080pでレンダリングして負荷を軽くし、アップスケーリングで表示された画像は1440pのように美しく見えるという感じ。
低負荷の低解像度でレンダリングして、高解像度のような画像を出力するという魔法のような超解像技術。

古い感覚だとアップスケーリングのことを拡大してちょっとシャープにした程度のようなものだと思っている人もいるかもしれませんが、超解像技術は1440pをアップスケーリングしてネイティブ4Kの映像と遜色ないクオリティを目指せるものです。
実際、Digital FoundryはPS5 Proの『Stellar Blade』のレビューで、「内部解像度が低いにもかかわらず、PSSRモードは、TAA(Temporal Anti-Aliasing)を使用したネイティブ4K画像よりも非常に良く見えます」と言っていました。

AIと非AI

まずNVIDIAのDLSSとAMDのFSRの決定的な違いは、AIを活用しているか?どうかです。

NVIDIAのDLSS(Deep Learning Super Sampling)AIを活用しています。

AMDのFSR(AMD FidelityFX™ Super Resolution)AIを活用していません。

つまりAMDのGPUには、AIを活用した超解像技術が無かったわけです。

しかし、PS5 ProのPSSR(PlayStation Spectral Super Resolution)AIを活用しています。
そしてPS5とXbox Series X|SはAMDのGPUを搭載しています。
AMDのGPUで初めてAIを活用した超解像技術が搭載されました。

PS5 Proの最重要ポイントはPSSR

古い基準では、FP32が何TFLOPSだとか、クロックが何MHzだとかでGPU性能が語られました。しかし、ゲームプレイにおいて大きな差は見えにくくなっています。実際、Xbox Series X|SはPS5よりもFP32の値が大きかったのですが、ゲームのパフォーマンスはPS5版の方が優れていることが珍しくありません。MSが買収したアクティビジョンの『Call of Duty®: Black Ops 6』ですら、PS5版の方がパフォーマンスが良くて話題になっていました。

それよりも、今は低解像度でレンダリングして高解像度のように出力する超解像技術の方が、目に見える差は大きくなります。
PS5 Proが魅力的な性能を持つかどうかは、PSSRの性能が最重要ポイントになります。
巷では「ゲームチェンジャー」とも言われています。

PSSR 1.0とFSR 3.1の比較

まずDLSSはNVIDIAのGPUのみの技術ですから、PS5とXbox Series X|Sには、まったく関係ありません。
PS5とXbox Series X|Sで既に実装されているFSRとの違いが重要になります。

武器を振った時の軌跡

この時点で圧倒的にPSSR 1.0のほうが優れているのがわかります。

FSR 3.1のアルゴリズムでは、武器を振るという素早い動きに対して正確に対応するのが難しいようです。ノイズのような状態になっていますし、軌跡から外れた部分にもノイズが飛んでいます。
背中にしょっているクランクもガビガビになっています。
武器の軌跡もガビガビです。

PSSR 1.0では、ノイズの飛び散りは一切ありません。
背中にしょっているクランクには綺麗にAAがかかっています。
武器の軌跡は軌跡らしい形をしています。

FSRの輪郭周りにノイズが出る問題

FSR 3.1では、キャラクターが激しく動くと輪郭周りにノイズが出る問題があります。これは『モンスターハンターワイルズ』のオープンベータテストでも問題視されていました。

PSSR 1.0には、この現象は一切ありません。素晴らしいです。

パーティクル(粒子)の表現

FSR 3.1は粒を粒として表現できておらず、短い紐のように繋がっています。
クリエイターが意図しているものと違う表現をしてしまうのは大きな問題です。

PSSR 1.0では粒が粒として表現されています。

Digital Foundryは紙吹雪の表現の問題も指摘しています。これは動画で見ないと確認できない部分です。
FSR 3.1は、紙きれが消えたり突然ポップしたりしています。
PSSR 1.0では、そのような現象はありません。

FSR 3.1で草が流れる問題

これも静止画ではわからない部分です。

FSR 3.1では、草が水のように左上に流れ続けるような表現になってしまっています。FSRのアルゴリズムが最初のフレームで「左上に流れているもの」と認識してしまっているかのようです。
PSSR 1.0では、そのような現象はありません。草らしくユラユラ揺れています。

FSR 3.1での不安定な光の反射

FSR 3.1では、光が当たっている部分がジャギジャギでチラチラする現象があります。
PSSR 1.0では自然な表現です。

フレーム生成は、いらない機能

DLSSやFSRはフレーム生成機能(FG)があります。
PSSRにはフレーム生成機能はありません。

アップデートでPSSRがフレームレート生成機能に対応するか?という以前に、この機能、そもそもゲームではいらない機能です。

フレーム生成機能は、内部でレンダリングしたフレームを溜める必要があるため、必ず遅延が発生します。この時点で、アクションゲームには不向きです。
「数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う」みたいな状況でもあり、確かにフレームレートは50fpsから100fpsとか大幅にアップしますが、遅延が発生していますから犠牲のほうが大きいです。
フレームレートの数字を大きくすることが目的になるのはズレています。ゲームを快適に遊びやすくするためにフレームレートの数字が欲しかったはずなのに、より不快で遊びにくくなる遅延を迎え入れるのは愚かです。
遅延を気にしない人にはいいかもしれませんが、このレベルの遅延を気にしない人がフレームレートを気にするのは疑問です。おそらく単に「数字として見えるから」でしょう。だから「数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う」みたいな手法に操られます。

さらに、完璧に正確なフレームを生成できませんから、残像のようなものが出やすくなり、画質としては劣化します。

こういうのって、ゲームをやらない人が持ち上げる印象です。クラウドゲームの時みたいに。クラウドゲームもフレームレート生成機能も遅延と画質の劣化があり、コアゲーマーが望むものではありません。
SIEのマーク・サーニーはコアゲーマーでもありますから、フレームレート生成機能を入れなかったのは納得しかありません。PS5 Proにフレーム生成機能を入れて「60fpsのゲームが120fpsに!」なんてこともできたでしょうけど、実用的でないハッタリの数字を出すことに興味がないのは良いことです。

FSR 3.1を凌駕する性能を持つPSSR 1.0

Digital Foundryの検証により、FSR 3.1とPSSR 1.0の大きな差が確認できました。

AMDの超解像技術として「同じようなもん」と括ってしまいがちかもしれませんが、パフォーマンスの差は大きく、PSSRはAIを活用することで「別物」という性能になっています。

そもそも画質を上げるのが目的なのに、FSR 3.1では看過できないレベルのノイズが発生しているのが大きな問題です。PSSR 1.0にはそれがありませんから、安心して利用できます。

PSSRのアップデートにも期待

PSSRは、まだ生まれたばかりです。バージョンで言えば1.0で、それで既にこの高い品質は素晴らしいです。

超解像技術は発展途上であり、まだまだ進化が期待できます。
FSRは3.1ですし、DLSSは4.0です。PSSRもバージョンアップしていくでしょう。

そしてこのPSSRがPS6での最重要ポイントになるかと思います。PS5 Proをリリース後、PSSRがどのように成長していくかは大注目です。
GPUの単純なパワーを上げるというやり方は進化幅が小さくなっており、消費電力の上昇、サイズの肥大、高価格化の問題が大きく、特に家庭用ゲーム機としては使いにくくなります。ゆえに、GPUのFP32やクロック数以上に、超解像技術の進化が期待されます。
PS5 ProでPSSRを生んだ意味は、かなり大きいです。

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